今日の日記

2003年6月4日
ル・グウィン『ゲド戦記5・アースシーの風』

竜はどこに行ってしまった?

見通しきれないというのは,ファンタジーの美味しさの1つだが
作者が見通しをつけないで作り始めた場合,その作者の器なり.
1〜3は見通して書いていたのではないかと思われるけれど
以降のものは,無理な建増しのように感じられる部分がある.
いや,見直して違う見方から別の建物にしてしまうことで
凄いものに化ける,ということもあるのだけれど….

伝統というか権威に憧れるが自らの文化には持っていなくて
伝統ないし権威をもつ文化を破壊し圧殺することを続けてきて
そのための罪悪感を浅薄な合理化で誤魔化そうとしてきた
そういう文化背景が感じられるのは,少し意地悪な視点か?

能天気なご都合主義の物語は,あまり面白くないだろうけれど
陰湿な感情をたっぷり描写すると物語が深みを持つわけでもない.
ただ,この部分は,著者の趣味で多くなっているだけかも.

「ゲド戦記外伝」を読んでみないとわからないけれども
竜頭蛇尾なファンタジーという感が強い.
そう,1巻の出来が秀逸だから,「お勧め」なのであって
読んでしまうと,続きを読みたくなるのが自然であり
結局,全部読んでしまう人が多いのではないだろうか.
それだけ読ませるものがあるということは傑作には違いない.

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