2月20日の日記

2006年2月20日 読書
桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』富士見ミステリー文庫

物語として駆け抜けきっている.書店で少しみて
いけるかも…駄目だったら又呪うまでと(→注)
求めて読んでみた.滑らずに,でも滞らず流れる.
あとがきにある成立事情と符合している気がする.

なんとなく,夢野久作『少女地獄』を思い出した.筋ではない.
あれの主人公と,桜庭一樹のかたりかたというのが妙に繋がる
ように感じられた,のだった.印象的なモチーフをもってきて
かたるので滑らかにのせられていくのだが,ふと気づくと
普通の小説とは微妙に異なる騙しを感じる部分がある.
もしかすると,あまりに現実的にするとつらいので虚構性を
もたせようと意識してやっていることかもしれないが,
無意識のうちに「かたる」癖がついているのかもしれない….

本の5頁,本文の前に置かれた5行の文が最初から
考えられていたものか,ちょっと興味深い.
これなしで物語を読んだときにどのように感じるか.

(注)書店で迷ったのは,『ブルースカイ』の読後感が複雑で
丁寧な仕事と感じるもツマランでもないが面白くもないと
なんとも落ち着かないものだったから.
http://diarynote.jp/d/14742/20051021.html
いま思うと,物語が始まるかと思うと飛躍して他所に行くのを
繰り返した挙句,最後に収束できていないと感じたからか.
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』では,そのようなことはない.
これから先,桜庭一樹作品を読むときには,今までよりもゆったり
彼女の語り口は,こういうものなのだ,と読めそうな気がする.

◇2007年9月6日追記
あしあとを眺めて,この日記を久しぶりに読んだら…
とても凄い引き込む力のある<救いのない>物語だ!
ということを書いていなかった.何故だったか?
心をゆさぶる力は凄いと思うけど再読していないし
読んでしまって泣いた人達とは『地雷』と形容してる.
この作品を再読したくなるような,そんな気持ちを抱く事態にならぬよう祈りたい.

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