5月18日の日記

2009年5月18日 読書
御影瑛路『僕らはどこにも開かない』電撃文庫

夾雑物のない文章で快い感じがする物語.

『空ろの箱と零(ゼロ)のマリア』の妙な読後感に
デビュー作から読んでみようかと手をつけたので
警戒して読み始めたけど,意外なほど真っ直ぐ.
無理して情感的なものを描こうと足掻いてないから
ヘンに掻き混ぜられることなくて読みやすいのかも.

あとがきの『執拗なまでに悪辣な表現をつかったり』
というのはちょっと違う気もするけど,どうなのだろう.

◇メモ

P.225 「美紀、自分の魅力にいまいち気がついてないでしょ?まぁ、今まで恋を
    知らなかったから当然っちゃ当然か。ん~……男どもがさ、一番好きに
    なりやすい女はどんな人だと思う?」
    「えーと……かわいくて、おとなしくて、自分を立ててくれて、あと料理得意とか、
    そんな女の子らしい女の子」
    「あー、男受けはいいだろうね。でも不正解。一番モテるコは、ある程度
     かわいくて話しやすくて、遠慮のいらない女の子。一言で言えば
     美紀みたいなコ。まぁ、美紀は文句なしにかわいいけど」
    「……絶対嘘だよ」
    ポーズではなく本気で否定する。
    「ホントだって。男どもは高嶺の花には、意外と手を出さないんだよ。
    ちょっと脈がありそうなコの方を狙ってくる。美紀はさ、そこら辺の刺激の
    仕方がうまいんだ。無意識に。もしかしたら、俺に気があるのかな?って気に
    みんなさせる。つーか、実際たくさん告られてきたべ?」

P.289  美紀さんのことを僕は理解できる。美紀さんの心情を、あらかた把握できている。
     でも、それでも、美紀さんの世界は僕には見えない。そんなことができるとも、
    微塵も思っていない。
     正しい美紀さんの世界なんて、僕にはちっともわからない。絶対にそこには
    僕はたどり着けない。
     僕らの世界は、例外なく誰であっても、どこにも開かれていない。
     それは相手が美紀さんだろうと、あるいは雅人であっても同じだ。

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