竹岡葉月『SH@PPLE(6) ―しゃっぷる―』富士見ファンタジア文庫
胸をきゅぅんきゅうんさせられた素敵な恋物語.(笑)
とりかえばや系というのは,最初の説明のところは
大抵の作品がどきどきさせる描写をやってのけるけど
その後の物語展開に移ると,地味なラブコメとなるか
無茶苦茶になって(多くの場合つまらなくなって)いくか.
しかし,最初のところをなんかさりげなく流した本作は
その後が,とても好い学園物?になっていて…そして
その叙述で,とりかえばや設定がよく活きている.
それにしても,240頁からの展開には驚いた.
SH@PPLEで,ここまで派手な展開が繰り広げられるとは….
それまでも,退屈させない楽しい物語だけど,この炸裂は凄い.
どうも,完全に絡めとられたようで,雪国の想いが届いて
蜜と雪国が睦まじくする場面を心待ちし始めている….
そんなところを見透かしたかのような仄めかしにやられました.
◇メモ
P.92 腹がたつのは、焼餅だろうか。でも、ねえ、どちらに?
あそこにいる淡谷先輩―― 『淡谷舞姫』が、胡蝶の宮と仲良くしている
ところを見るのが嫌なのだろうか。それとも、彼女が演じている『雪国』が、
胡蝶の宮と仲良くしているところを見るのが嫌なのだろうか。
『舞姫』(中身)、『雪国』(外見)、どちらなの?一駿河蜜。
P.111 ――でも蜜。あなた傷ついていなかった?
――今日。お姉様の隣に『淡谷雪国』がいるのを見て。嫌だと思わなかった?
P.227 「……いらないなら、蜜が弟さんもらっちゃいますよ」
P.266 「お姉様……弟さんと、ご一緒されてたんじゃ……」
「ええ。気分よく失恋して参りましたわ」
さばさばとした調子で歩き出すので信じられなかった。
「ま、待ってください。そんなの――何かの間違いで――」
「間違いもなにもございませんわ。もちろんあきらめる気もございませんけど」
うろたえる蜜に、彼女は屋敷に入る手前で一瞬だけ立ち止まって、言った。
「よろしくて、蜜。恋愛に上下関係はなくてよ」
「な……」
P.267 「まして今のあたくしに遠慮は無用。欲しいと思うのなら、冗談んなどで
ごまかさずに本気で取りにいらっしゃい。わかって?」
はいお姉様。なんて。誰が言えただろう。
まるで、蜜が『先輩』と『弟さん』の間で揺れていたことを見透かすように。
無遠慮とも言える情熱的なまなざしは、以前の彼女にはないもののように
思えた。サバンナを駆ける猫科の良き物のように美しかった。
何が彼女を変えたのだろう。
どうしてこんなことになったのだろう。
保健室で指輪をくれた『お姉様』。
理科室で蜜のことを助けてくれた『先輩』。
劇の稽古の、『弟さん』。
そして女装して『先輩』そっくりの『弟さん』。
いくつもの出会いと、それを彩る光景が、透かしたプレパラートのように重なり
合い、呆然とする蜜の目の前にあふれかえる。その中の一枚――幻のはずの
典子が、くすりと微笑み歩き出した。
そこから数秒たって、蜜はようやく我にかえった気がした。
P.268 「お姉様。誤解です。蜜が――好きなのは――」
好きなのは?
胸をきゅぅんきゅうんさせられた素敵な恋物語.(笑)
とりかえばや系というのは,最初の説明のところは
大抵の作品がどきどきさせる描写をやってのけるけど
その後の物語展開に移ると,地味なラブコメとなるか
無茶苦茶になって(多くの場合つまらなくなって)いくか.
しかし,最初のところをなんかさりげなく流した本作は
その後が,とても好い学園物?になっていて…そして
その叙述で,とりかえばや設定がよく活きている.
それにしても,240頁からの展開には驚いた.
SH@PPLEで,ここまで派手な展開が繰り広げられるとは….
それまでも,退屈させない楽しい物語だけど,この炸裂は凄い.
どうも,完全に絡めとられたようで,雪国の想いが届いて
蜜と雪国が睦まじくする場面を心待ちし始めている….
そんなところを見透かしたかのような仄めかしにやられました.
◇メモ
P.92 腹がたつのは、焼餅だろうか。でも、ねえ、どちらに?
あそこにいる淡谷先輩―― 『淡谷舞姫』が、胡蝶の宮と仲良くしている
ところを見るのが嫌なのだろうか。それとも、彼女が演じている『雪国』が、
胡蝶の宮と仲良くしているところを見るのが嫌なのだろうか。
『舞姫』(中身)、『雪国』(外見)、どちらなの?一駿河蜜。
P.111 ――でも蜜。あなた傷ついていなかった?
――今日。お姉様の隣に『淡谷雪国』がいるのを見て。嫌だと思わなかった?
P.227 「……いらないなら、蜜が弟さんもらっちゃいますよ」
P.266 「お姉様……弟さんと、ご一緒されてたんじゃ……」
「ええ。気分よく失恋して参りましたわ」
さばさばとした調子で歩き出すので信じられなかった。
「ま、待ってください。そんなの――何かの間違いで――」
「間違いもなにもございませんわ。もちろんあきらめる気もございませんけど」
うろたえる蜜に、彼女は屋敷に入る手前で一瞬だけ立ち止まって、言った。
「よろしくて、蜜。恋愛に上下関係はなくてよ」
「な……」
P.267 「まして今のあたくしに遠慮は無用。欲しいと思うのなら、冗談んなどで
ごまかさずに本気で取りにいらっしゃい。わかって?」
はいお姉様。なんて。誰が言えただろう。
まるで、蜜が『先輩』と『弟さん』の間で揺れていたことを見透かすように。
無遠慮とも言える情熱的なまなざしは、以前の彼女にはないもののように
思えた。サバンナを駆ける猫科の良き物のように美しかった。
何が彼女を変えたのだろう。
どうしてこんなことになったのだろう。
保健室で指輪をくれた『お姉様』。
理科室で蜜のことを助けてくれた『先輩』。
劇の稽古の、『弟さん』。
そして女装して『先輩』そっくりの『弟さん』。
いくつもの出会いと、それを彩る光景が、透かしたプレパラートのように重なり
合い、呆然とする蜜の目の前にあふれかえる。その中の一枚――幻のはずの
典子が、くすりと微笑み歩き出した。
そこから数秒たって、蜜はようやく我にかえった気がした。
P.268 「お姉様。誤解です。蜜が――好きなのは――」
好きなのは?
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