米澤穂信『玉野五十鈴の誉れ』(P.P. 277-349 『Story Seller』 新潮文庫)

透明感の高いミステリを楽しめた.
小市民シリーズよりヒンヤリ度は高め.
四書五経のお勉強?
『鵠は日に浴せずして白し』は調べて納得.日は日光じゃない.(爆)

◇メモ
P.280 鵠は日に浴せずして白し

   鵠は日に浴せずして白く、烏は日に黔めずして黒し
  (こくはひによくせずしてしろく、からすはひにくろめずしてくろし)
   白鳥は毎日水浴びしなくても常に白く、烏は毎日身体を染めなくても常に黒い。

   1.生まれながらにして善なる者は教えられなくとも善良である。
   同様に、品性の卑(いや)しい者は何度教えても低俗である。
   「荘子-外篇・天運」「夫鵠不日浴而白、烏不日黔而黒、黒白之朴、不足以為弁」

P.288 須臾しゅゆ しばらく。しばしの間。暫時。
P.289 一揖いちゆう ちょっとおじぎをすること。

P.290 屠龍の技 屠竜の技 竜を殺す技術。
   巧みではあるが実際の役に立たないわざのたとえ。 荘子-列禦寇

P.294 轍鮒ノ急てっぷのきゅう

   「轍鮒」は、轍(わだち)の水溜りにいる鮒のこと。
   非常に苦しい境遇にある者は、ぐずぐずしていては救えないということ。
   また、差し迫った危険や困窮の喩え。 故事:「荘子-雑篇・外物」

   轍に鮒がいた。問うと、水を汲んできて助けてくれと言う。
   「これから呉か越に行って水を得て、それからお前を迎え入れよう」と言うと、
   鮒は大いに怒り、「今は一刻を争うところであり、後日の大量の水よりも
   一滴の水が必要なのだ。そうでなければ私は死ぬから、
   私を迎えたいのであれば、乾物屋にでも行って探し求めるが良い」と言った。

P.295 「純香さまは、和漢のものがお好きなようですね。でも、読み物はいかがでしたか」
    「お祖母さまがお好きでないから……」
    「『志異』や『紅楼夢』、『宇治拾遺』に『雨月』ぐらいなら、大奥さまもお許しになる
    のではないですか」
     そうかもしれないと思い、わたしはそれらを手に入れて読んだ。「『宇治拾遺』から
    芥川というのも定石です」と言われて、それも読んだ。「『雨月』は中国に範をとった
P.296 ものが多いです。『剪燈新話』など、いかがですか」といわれて、それも読んだ。
    そうして読んでいくうち、「これは中国の小説の中でも、最良といわれるものの
    うちの一つです」と言われ、まんまと乗せられて読んでしまったのが『金瓶梅』
    だった。翌朝、わたしは顔を真っ赤にして何も言わず、足音を立てて五十鈴を
    追い、何度も何度もぶった。五十鈴は笑いながら「ごめんなさい、ごめんなさい。
    この本を差し上げますから、許してください」と一冊の本をくれた。そうして
    読まされたのがバタイユの『蠱惑の夜』だったものだから、わたしはもう
    すっかり臍を曲げて、三日も五十鈴に口を利かなかった。どうやら五十鈴は
    マルキ・ド・サドも用意したようだったけれど、さすがに反省したらしく、
    それは出してこなかった。
                          …五十鈴って,なんという凶悪娘(爆)

P.302 芝蘭の室に入るが如し

   芝蘭のような香りの高い草がある部屋に長くいると、いつの間にか芳香が
   身にしみついて、気持ちよくなる。善人と長くつきあっていると、
   知らないうちにその人のよい影響を受けて感化されるたとえである。
   「芝蘭」霊芝と蘭(ふじばかま)。ともによい香りを放つ草。
   転じて、すぐれた人や物のたとえ。  孔子家語六本

P.304 鮑魚の肆ほうぎょのし ほうぎょのいちぐち

   悪臭を放つ塩漬けの魚を商っている店の中に入るとその悪臭に慣れて何も
   感じなくなってしまうように、不善の人や悪人・小人などと交わっていると
   いつの間にかそれらの人々の性向に染まってしまうということのたとえ。
    孔子家語六本

P.316 烏は日に黔めずして黒し

荘子-外篇・天運」「夫鵠不日浴而白、烏不日黔而黒、黒白之朴、不足以為弁」
   →P.280 鵠は日に浴せずして白し

P.323 累卵の危うき
   積み上げた卵は不安定で崩れ易く、とても危ない。
   転じて、ものごとが不安定で危険な状態である喩え。
   「史記-范雎伝」「秦王之国、危如累卵」

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