杉井光『剣の女王と烙印の仔III 』MF文庫J
物語世界の見通しがきくようになってきて
とても,わくわくさせられる.
ほんとうに,切なく一生懸命な姿を描くのが
なんて見事なのだろう…….
流石の杉井光もこの文体だとぎごちないかと
一巻のとき感じたけれども,流石は杉井光.
この巻では,とてもこなれてしまっている.
どういう展開が待っているのか楽しみ~.
◇メモ
P.56 「ニコロに頼むのは、もっと――危険なこと、なのだけれど」
「ジルよりもかよ。そりゃ光栄だ。いったい――」
P.59 「ニコロは、酸とかそういった薬品も扱えるのよね?」
気圧されたのか、ニコロは黙ってうなずく。
「なるべくひとりでやってほしいのだけれど、材料を集めるのは
さすがに人手が要るでしょうね」
「なにやらせるつもりなんだ」
P.188 「やつがら火を放ったのか」 …著者にしては珍しい.
P.72 「ニコロ、進捗はどう?」
危険な作業なので中に入るなと言われており、フランチェスカは扉の外から
呼びかけた。ややあって、軍医が顔を出す。片眼鏡の下にはくっきりくまが
できていて、無精髭も伸びている。徹夜作業だったらしい。
「薬品はどにかそろえられる。ただ、どうしようもないのが、鉄板だ」
P.73 「鉄板?」
「そう。完全に均一な厚さのがいくつも必要なんだが、どこで仕入れるか。
加工してるひまもあるのやら……」
「それは困ったわね。街の鍛冶職人に今から頼んでも……」
二人で額をつきあわせて腕組みし、考え込んでいたときである。
隣のジルベルトがぼそりと言った。
「鎧があります」
フランチェスカは顔を上げた。鎧?
「聖王国軍の鎧は大量生産品で、聖都製であればかなり品質がよい。工程が
簡略化されているので板金をそのまま用いている部分もあります。使えるでしょう」
P.190 「酸の使い方は、まだパオラには教えてなかったな。……教えない方が
よさそうだが」
哀しげなニコロの言葉に、パオラは唇を震わせるだけだ。
「砂糖に、ある種の石の粉を混ぜて、強酸を加えると激しく発火する」
…硝石といってもわからない人が多いかな.
P.191 「だから。鉄の仕切りの上に酸を入れて、その下に燃料を詰めたんだよ。
そんな箱をもう何百と造った。ジルベルトと一緒に隠して回ったよ。納屋の
藁山とか、油壺のそばとかな。酸が、一晩かけて鉄を溶かして」
P.190
物語世界の見通しがきくようになってきて
とても,わくわくさせられる.
ほんとうに,切なく一生懸命な姿を描くのが
なんて見事なのだろう…….
流石の杉井光もこの文体だとぎごちないかと
一巻のとき感じたけれども,流石は杉井光.
この巻では,とてもこなれてしまっている.
どういう展開が待っているのか楽しみ~.
◇メモ
P.56 「ニコロに頼むのは、もっと――危険なこと、なのだけれど」
「ジルよりもかよ。そりゃ光栄だ。いったい――」
P.59 「ニコロは、酸とかそういった薬品も扱えるのよね?」
気圧されたのか、ニコロは黙ってうなずく。
「なるべくひとりでやってほしいのだけれど、材料を集めるのは
さすがに人手が要るでしょうね」
「なにやらせるつもりなんだ」
P.188 「やつがら火を放ったのか」 …著者にしては珍しい.
P.72 「ニコロ、進捗はどう?」
危険な作業なので中に入るなと言われており、フランチェスカは扉の外から
呼びかけた。ややあって、軍医が顔を出す。片眼鏡の下にはくっきりくまが
できていて、無精髭も伸びている。徹夜作業だったらしい。
「薬品はどにかそろえられる。ただ、どうしようもないのが、鉄板だ」
P.73 「鉄板?」
「そう。完全に均一な厚さのがいくつも必要なんだが、どこで仕入れるか。
加工してるひまもあるのやら……」
「それは困ったわね。街の鍛冶職人に今から頼んでも……」
二人で額をつきあわせて腕組みし、考え込んでいたときである。
隣のジルベルトがぼそりと言った。
「鎧があります」
フランチェスカは顔を上げた。鎧?
「聖王国軍の鎧は大量生産品で、聖都製であればかなり品質がよい。工程が
簡略化されているので板金をそのまま用いている部分もあります。使えるでしょう」
P.190 「酸の使い方は、まだパオラには教えてなかったな。……教えない方が
よさそうだが」
哀しげなニコロの言葉に、パオラは唇を震わせるだけだ。
「砂糖に、ある種の石の粉を混ぜて、強酸を加えると激しく発火する」
…硝石といってもわからない人が多いかな.
P.191 「だから。鉄の仕切りの上に酸を入れて、その下に燃料を詰めたんだよ。
そんな箱をもう何百と造った。ジルベルトと一緒に隠して回ったよ。納屋の
藁山とか、油壺のそばとかな。酸が、一晩かけて鉄を溶かして」
P.190
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