12月12日の日記

2010年12月12日 読書
米澤穂信『ふたりの距離の概算』角川書店

高校生活の日々に,軟らかい推理を入らせた
いつもの著者らしい,静かでしっとりした好作品.
どうも,これの前の数冊を踏まえて展開してるが
それらを読んでいなくても楽しめた.

◇メモ  *は2012年8月23日再読時追加分.
招き猫:P.78, P.89, P.93, P.105, P.109
P.19 「確か、千反田さんのことを『仏様みたいな人だ』と言っていた、とかなんとか。
   悪いニュアンスでなかったことだけは憶えてる」
P.19 では大日向は「入部はしない」ということと「千反田は仏のような人だ」ということの
   二つを言ったのか。そうだとすると素直に考えて、「入部はしないけれどそれは
   千反田のせいではない」という意味になりそうだ。

P.34 話すことがなくても求められた時間だけ話ができる。これはこれで
   素晴らしい技術で、とても真似できるものではない。*
P.37 千反田がもう少し気を利かせて椅子をずらしてくれればずいぶん
   楽になるのだが、あいにくこいつは他人との距離の測り方が独特で、
   肩が触れるほど近くても気にならないというたちなのだ。*
P.69 「あたし、この部活に入ります。で、なんていう部活でしたっけ」*
P.70 「いいんですか? まだ何も説明してないんですが」
   「いいんです」
   そして俺と千反田を順番に見て、また笑う。
   「なんか仲良しオーラを感じるんで。あたし、仲のいいひと
   見てるのが一番幸せなんです」*
P.73 「その時、大日向は千反田のことをなんて言っていたんだ。里志に聞いた。
    『仏様みたいな人だ』と言っていたと。本当に一言も間違いなく
    そうだったのか」*
P.74 「違う。ひなちゃんが言ったのは、『千反田先輩は菩薩みたいに見えますよね』」と。
P.85 「諸君、これはいったいなんという鵞鳥だい」*
   萩原朔太郎『月に吼える』
http://www.aozora.gr.jp/cards/000067/files/859_21656.html
P.114 「日本語の話なんだが。外見が菩薩に見えるなら、内心はなんだ?」
P.115 「外面は菩薩の如くなら、内心は決まってる。……夜叉さ」
    そしてやつは、冗談めかしてこう付け加える。
    「ただ僕の知る限り、千反田さんの好物が石榴だったかどうかは
    わからないな」*
P.124 「黒い猫でも白い猫でも、菓子をくれるのはいい猫だ」
    「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」
    (不管黑猫白猫,捉到老鼠就是好猫)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%82%A6%E5%B0%8F%E5%B9%B3
P.150 「井戸水、それもこの辺りのものではありません。もう少し上流に
    遡って、山際の湧き水を汲んできた中硬水。どうでしょう?」*
P.156 「じゃあたとえば、阿川って子は知っていますか?」*
P.182 大日向を決定的に怒らせるようなことをしてしまった。たとえば鶏の唐揚げを
    食べようというのに、断りもなくレモンの絞り汁をかけてしまうようなことだ。
    …居るんだよな~,断らずにかけようとする奴.(笑)
P.205 「A組の男子一番、相倉直也さんと、同じくA組の女子一番、阿川佐知さんが
    入学宣誓を務めました。確かに、大日向さんの質問は唐突で奇妙でしたが、
    わたしはてっきり、記憶力を試されたのだと思っていました」*
P.216 「直接は言ってないが、伊原に『菩薩みたい』と言っただろう」
    「褒め言葉じゃないですか」
    本当にそうなら、そんなに俯いて言わなくてもいい。
    「外面が菩薩なら、内心は夜叉だろう」
    力なく顔を上げ、大日向は苦笑いする。
    「わからないように言ったんだから、わからないふりくらいしてくださいよ」
    二年生はいろいろ知ってるんだ。わかってほしくないなら、
    もっとわからないように言った方がいいな」
    「ロシア語とかで?」
    「ロシア語とかで」

P.246 「仲のいいひと見てるのが一番幸せなんです。それは本当。
    だからね、先輩。この二ヶ月、あたしけっこう、救われてたんだと思う」*

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