米澤穂信『ふたりの距離の概算』角川書店
高校生活の日々に,軟らかい推理を入らせた
いつもの著者らしい,静かでしっとりした好作品.
どうも,これの前の数冊を踏まえて展開してるが
それらを読んでいなくても楽しめた.
◇メモ *は2012年8月23日再読時追加分.
招き猫:P.78, P.89, P.93, P.105, P.109
P.19 「確か、千反田さんのことを『仏様みたいな人だ』と言っていた、とかなんとか。
悪いニュアンスでなかったことだけは憶えてる」
P.19 では大日向は「入部はしない」ということと「千反田は仏のような人だ」ということの
二つを言ったのか。そうだとすると素直に考えて、「入部はしないけれどそれは
千反田のせいではない」という意味になりそうだ。
P.34 話すことがなくても求められた時間だけ話ができる。これはこれで
素晴らしい技術で、とても真似できるものではない。*
P.37 千反田がもう少し気を利かせて椅子をずらしてくれればずいぶん
楽になるのだが、あいにくこいつは他人との距離の測り方が独特で、
肩が触れるほど近くても気にならないというたちなのだ。*
P.69 「あたし、この部活に入ります。で、なんていう部活でしたっけ」*
P.70 「いいんですか? まだ何も説明してないんですが」
「いいんです」
そして俺と千反田を順番に見て、また笑う。
「なんか仲良しオーラを感じるんで。あたし、仲のいいひと
見てるのが一番幸せなんです」*
P.73 「その時、大日向は千反田のことをなんて言っていたんだ。里志に聞いた。
『仏様みたいな人だ』と言っていたと。本当に一言も間違いなく
そうだったのか」*
P.74 「違う。ひなちゃんが言ったのは、『千反田先輩は菩薩みたいに見えますよね』」と。
P.85 「諸君、これはいったいなんという鵞鳥だい」*
萩原朔太郎『月に吼える』
http://www.aozora.gr.jp/cards/000067/files/859_21656.html
P.114 「日本語の話なんだが。外見が菩薩に見えるなら、内心はなんだ?」
P.115 「外面は菩薩の如くなら、内心は決まってる。……夜叉さ」
そしてやつは、冗談めかしてこう付け加える。
「ただ僕の知る限り、千反田さんの好物が石榴だったかどうかは
わからないな」*
P.124 「黒い猫でも白い猫でも、菓子をくれるのはいい猫だ」
「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」
(不管黑猫白猫,捉到老鼠就是好猫)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%82%A6%E5%B0%8F%E5%B9%B3
P.150 「井戸水、それもこの辺りのものではありません。もう少し上流に
遡って、山際の湧き水を汲んできた中硬水。どうでしょう?」*
P.156 「じゃあたとえば、阿川って子は知っていますか?」*
P.182 大日向を決定的に怒らせるようなことをしてしまった。たとえば鶏の唐揚げを
食べようというのに、断りもなくレモンの絞り汁をかけてしまうようなことだ。
…居るんだよな~,断らずにかけようとする奴.(笑)
P.205 「A組の男子一番、相倉直也さんと、同じくA組の女子一番、阿川佐知さんが
入学宣誓を務めました。確かに、大日向さんの質問は唐突で奇妙でしたが、
わたしはてっきり、記憶力を試されたのだと思っていました」*
P.216 「直接は言ってないが、伊原に『菩薩みたい』と言っただろう」
「褒め言葉じゃないですか」
本当にそうなら、そんなに俯いて言わなくてもいい。
「外面が菩薩なら、内心は夜叉だろう」
力なく顔を上げ、大日向は苦笑いする。
「わからないように言ったんだから、わからないふりくらいしてくださいよ」
二年生はいろいろ知ってるんだ。わかってほしくないなら、
もっとわからないように言った方がいいな」
「ロシア語とかで?」
「ロシア語とかで」
P.246 「仲のいいひと見てるのが一番幸せなんです。それは本当。
だからね、先輩。この二ヶ月、あたしけっこう、救われてたんだと思う」*
高校生活の日々に,軟らかい推理を入らせた
いつもの著者らしい,静かでしっとりした好作品.
どうも,これの前の数冊を踏まえて展開してるが
それらを読んでいなくても楽しめた.
◇メモ *は2012年8月23日再読時追加分.
招き猫:P.78, P.89, P.93, P.105, P.109
P.19 「確か、千反田さんのことを『仏様みたいな人だ』と言っていた、とかなんとか。
悪いニュアンスでなかったことだけは憶えてる」
P.19 では大日向は「入部はしない」ということと「千反田は仏のような人だ」ということの
二つを言ったのか。そうだとすると素直に考えて、「入部はしないけれどそれは
千反田のせいではない」という意味になりそうだ。
P.34 話すことがなくても求められた時間だけ話ができる。これはこれで
素晴らしい技術で、とても真似できるものではない。*
P.37 千反田がもう少し気を利かせて椅子をずらしてくれればずいぶん
楽になるのだが、あいにくこいつは他人との距離の測り方が独特で、
肩が触れるほど近くても気にならないというたちなのだ。*
P.69 「あたし、この部活に入ります。で、なんていう部活でしたっけ」*
P.70 「いいんですか? まだ何も説明してないんですが」
「いいんです」
そして俺と千反田を順番に見て、また笑う。
「なんか仲良しオーラを感じるんで。あたし、仲のいいひと
見てるのが一番幸せなんです」*
P.73 「その時、大日向は千反田のことをなんて言っていたんだ。里志に聞いた。
『仏様みたいな人だ』と言っていたと。本当に一言も間違いなく
そうだったのか」*
P.74 「違う。ひなちゃんが言ったのは、『千反田先輩は菩薩みたいに見えますよね』」と。
P.85 「諸君、これはいったいなんという鵞鳥だい」*
萩原朔太郎『月に吼える』
http://www.aozora.gr.jp/cards/000067/files/859_21656.html
P.114 「日本語の話なんだが。外見が菩薩に見えるなら、内心はなんだ?」
P.115 「外面は菩薩の如くなら、内心は決まってる。……夜叉さ」
そしてやつは、冗談めかしてこう付け加える。
「ただ僕の知る限り、千反田さんの好物が石榴だったかどうかは
わからないな」*
P.124 「黒い猫でも白い猫でも、菓子をくれるのはいい猫だ」
「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」
(不管黑猫白猫,捉到老鼠就是好猫)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%82%A6%E5%B0%8F%E5%B9%B3
P.150 「井戸水、それもこの辺りのものではありません。もう少し上流に
遡って、山際の湧き水を汲んできた中硬水。どうでしょう?」*
P.156 「じゃあたとえば、阿川って子は知っていますか?」*
P.182 大日向を決定的に怒らせるようなことをしてしまった。たとえば鶏の唐揚げを
食べようというのに、断りもなくレモンの絞り汁をかけてしまうようなことだ。
…居るんだよな~,断らずにかけようとする奴.(笑)
P.205 「A組の男子一番、相倉直也さんと、同じくA組の女子一番、阿川佐知さんが
入学宣誓を務めました。確かに、大日向さんの質問は唐突で奇妙でしたが、
わたしはてっきり、記憶力を試されたのだと思っていました」*
P.216 「直接は言ってないが、伊原に『菩薩みたい』と言っただろう」
「褒め言葉じゃないですか」
本当にそうなら、そんなに俯いて言わなくてもいい。
「外面が菩薩なら、内心は夜叉だろう」
力なく顔を上げ、大日向は苦笑いする。
「わからないように言ったんだから、わからないふりくらいしてくださいよ」
二年生はいろいろ知ってるんだ。わかってほしくないなら、
もっとわからないように言った方がいいな」
「ロシア語とかで?」
「ロシア語とかで」
P.246 「仲のいいひと見てるのが一番幸せなんです。それは本当。
だからね、先輩。この二ヶ月、あたしけっこう、救われてたんだと思う」*
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