大樹連司『お嬢様のメイドくん』一迅社文庫
途中まで微妙に読みにくい感じがあったけれども
後半の破天荒な展開は吃驚させるものがある.
一迅社だな,という路線ではあるけれども
ちょっと,ひねり方が変わっていて面白い.
一番意外だったのは,あとがきがなかったこと.
うん,著者の考えを聞いてみたい部分が結構あったし.
◇メモ
P.119 「軍くつの音が聞こえる!!」 軍靴をグンクツって,ネタかと思ったけど,謎だ.
P.121 養殖物の話,真鯛の養殖の初期に言われた話で,とうに対策されてるから
同じことが金目鯛の養殖で起きることはないだろうなぁ.
P.193 その変わり、ご飯を作るの手伝ってくださいね? …その代わりだなぁ.
P.203 ――なんで、男なんだ、ぼく――。
もう、嫌だ。本当に、嫌だ。こんなの生理現象だから、ちゃんと、定期的に
出さなきゃこうなるのはわかっていた。でも、嫌だった。機械みたいに、
処理しようとするのだ。何も考えず、ただ先端に刺激を与えようと。なのに、
いつのまにかお嬢様のことを想ってしまう。下劣な欲望だ。妄想の中で
「こないで、こないで」と泣き叫ぶお嬢様を穢してしまう。そうして、欲望を
吐き出した後、いつも途方もない自己嫌悪に陥るのだ。
だから、それさえ嫌で――。
女の子の服を着ても、結局、自分は、どうしようもなく、汚らわしい男だ。
あたりまえだ。泣きたい。泣いてしまいたい。とにかく泣きたい――。
P.205 「ねえ、兄様? スカートはお好き?」
不意に問われて、雪風は戸惑う。
「お答えになって――? 素直に、率直に――」
「――、その、嫌いじゃない、です――、長いのは、好きかも――」
「ヘイゼル姉様にぎゅうって抱かれるのは?」
「す、好きですよ――でも、それは、殿下が本当は、女の子だからで――」
「自分は男の子だとお思い? それとも女の子だと?」
「男ですよ、ぼくは」
「女の子の格好は好き?」
「――、――、――たぶん、好きです」
支離滅裂だ。めちゃくちゃだ。なんなんだ、自分って。
「なら、それが、兄様なのよ」
なのに、あっさり、姉様は言う。
「それがって――、だって――、」
「ね、兄様。男だ女だなんて、本当は、そんなに簡単に割り切れるものでは
なくてよ? 議長のように女性しか愛せない方もいれば、ヘイゼル姉様のように、
躰は女の子でも、心は完全に王子様な方だっていらっしゃる。躰に少しだけ、
男の子の部分が混ざっている女の子もいるし、その逆もあるでしょう――。
兄様の場合、たしかに躰は男の子でも、心にちょっとだけ、女の子の部分が
あったってことかもしれないわね?」
「――そういう、ものなんですか――?」
「もし奇那も男の子だって言ったらどうします?」
「そんな、だって、胸――」
「そんなものいくらでも大きくできましてよ。下だってわからないぐらい小さい
だけだったり――もう、そんなに慌てないでくださいましな。冗談でしてよ。
――でも、そういうものよ。奇那は兄様の女の子な部分を育てて上げたいし、
応援してあげたいと思っていますわ。いつかは、やっぱり、自分が男の子だと
確信できたのなら、その時のこと。しばらく、そのままでいらっしゃって頂けると、
奇那もうれしいわ、雪風会長?」
……一迅社らしいなぁ.
途中まで微妙に読みにくい感じがあったけれども
後半の破天荒な展開は吃驚させるものがある.
一迅社だな,という路線ではあるけれども
ちょっと,ひねり方が変わっていて面白い.
一番意外だったのは,あとがきがなかったこと.
うん,著者の考えを聞いてみたい部分が結構あったし.
◇メモ
P.119 「軍くつの音が聞こえる!!」 軍靴をグンクツって,ネタかと思ったけど,謎だ.
P.121 養殖物の話,真鯛の養殖の初期に言われた話で,とうに対策されてるから
同じことが金目鯛の養殖で起きることはないだろうなぁ.
P.193 その変わり、ご飯を作るの手伝ってくださいね? …その代わりだなぁ.
P.203 ――なんで、男なんだ、ぼく――。
もう、嫌だ。本当に、嫌だ。こんなの生理現象だから、ちゃんと、定期的に
出さなきゃこうなるのはわかっていた。でも、嫌だった。機械みたいに、
処理しようとするのだ。何も考えず、ただ先端に刺激を与えようと。なのに、
いつのまにかお嬢様のことを想ってしまう。下劣な欲望だ。妄想の中で
「こないで、こないで」と泣き叫ぶお嬢様を穢してしまう。そうして、欲望を
吐き出した後、いつも途方もない自己嫌悪に陥るのだ。
だから、それさえ嫌で――。
女の子の服を着ても、結局、自分は、どうしようもなく、汚らわしい男だ。
あたりまえだ。泣きたい。泣いてしまいたい。とにかく泣きたい――。
P.205 「ねえ、兄様? スカートはお好き?」
不意に問われて、雪風は戸惑う。
「お答えになって――? 素直に、率直に――」
「――、その、嫌いじゃない、です――、長いのは、好きかも――」
「ヘイゼル姉様にぎゅうって抱かれるのは?」
「す、好きですよ――でも、それは、殿下が本当は、女の子だからで――」
「自分は男の子だとお思い? それとも女の子だと?」
「男ですよ、ぼくは」
「女の子の格好は好き?」
「――、――、――たぶん、好きです」
支離滅裂だ。めちゃくちゃだ。なんなんだ、自分って。
「なら、それが、兄様なのよ」
なのに、あっさり、姉様は言う。
「それがって――、だって――、」
「ね、兄様。男だ女だなんて、本当は、そんなに簡単に割り切れるものでは
なくてよ? 議長のように女性しか愛せない方もいれば、ヘイゼル姉様のように、
躰は女の子でも、心は完全に王子様な方だっていらっしゃる。躰に少しだけ、
男の子の部分が混ざっている女の子もいるし、その逆もあるでしょう――。
兄様の場合、たしかに躰は男の子でも、心にちょっとだけ、女の子の部分が
あったってことかもしれないわね?」
「――そういう、ものなんですか――?」
「もし奇那も男の子だって言ったらどうします?」
「そんな、だって、胸――」
「そんなものいくらでも大きくできましてよ。下だってわからないぐらい小さい
だけだったり――もう、そんなに慌てないでくださいましな。冗談でしてよ。
――でも、そういうものよ。奇那は兄様の女の子な部分を育てて上げたいし、
応援してあげたいと思っていますわ。いつかは、やっぱり、自分が男の子だと
確信できたのなら、その時のこと。しばらく、そのままでいらっしゃって頂けると、
奇那もうれしいわ、雪風会長?」
……一迅社らしいなぁ.
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