2月16日の日記

2012年2月16日 読書
入間人間『昨日は彼女も恋してた』メディアワークス文庫

のんびりした感じがいいなと楽しく読み進んで
油断していたら,最後に吹っ飛ばされた.快感!

『電波女と青春男 SF(すこしふしぎ)版』で
『タイムマシン』や『タイム・シップ』を出してて
好きなのだなとは思っていたけど,やるとは!
まぁ,この巻での扱いはBack to the Futureの
捩りくらいだけど,大好きな『みーまー』からして
時間の要素を叙述にずいぶん活用しているし
入間人間さんの中心要素の一つかもしれない.

◇メモ
P.11 祖母は僕をやがみさんと呼ぶ。勿論、僕の名字は八神などではない。
   そもそも、祖母が孫を名字で呼ぶはずがなくて、つまりは
   そういうことだった。認知症。
P.15 あいつの名前はニアという。あだ名なんだけど、誰もがそう呼ぶ。
    わたしも昔はその名前を何度も口にした。だけど今となっては、代わりに
   唾を吐いてしまう。今も横を通り過ぎたことに気づいていたけど、お互いに
   声もかけなかった。
    かけたら吐きかけるつもりだった唾を飲みこむ。無駄になった唾は生暖かった。
    さっき通りすぎた癖毛の元同級生、玻璃綾乃という男も自転車で通りすぎる際、
   派手にこちらを振り向いて不愉快だったけど、ニアの方は格別だ。
P.20 島を半時計回りに進むと  …反時計回り
P.20 父は小学校の教師で、母は毎日、海に素潜りしている。
P.37 この島で、わたしのような人間のことも考えてトイレの設備を整えてあるのは
   自宅と、この研究所ぐらいだ。人数が少ない以上、怪我人もまた出づらい。
   だから島の歴史上、わたし以外には一人もいないのかもしれない。そう愚痴
   めいたものをこぼすと、やんわりとした否定が上がった。
   「いんやぁ」
   松平貴弘が顎に手を当てて、間延びした声と共に振り向く。
   「前にもいた気もするぞ、うろ覚えだが」
   「……あ」
P.38 そういえば、わたしにも覚えがある。一人いたのだ、以前にも。その人も
   生きづらそうに、しかめ面で島の中を回っていた。
P.42 松平貴弘がなんの了解もなくわたしを抱えて、連れ去り、乱暴に車の助手席に
   放り込んでしまう。薄く安っぽいシートは衝撃を欠片も吸収せず、臀部の骨に
   痛みが染み渡る。落下で無造作に垂れた前髪を掻き上げながら文句を口に
   しようとすると、松平貴弘は既に車いすを畳んで後ろに載せようとしていた。
P.43 後部座席の方でなにか音がした、ように聞こえた。積んであるなにかが
   崩れたのだろうか。
P.54 荷台から車いすを下ろす。
P.59 わたしと仲が良かった頃の、小さなニアだ。
P.68 軽トラの荷台にある車いすを用意した。
P.75 そして『今日』も祖母、村上清春が一人で、小さな畑の世話に精を出していた。
P.79 「ヤガミカズヒコ、です」
P.110 「しかし二週間もどこに寝泊りする気だ?行っておくが俺の家はダメだぞ」
     …言
P.118 どこで調達してきたのか、黙々と大型のシャベルを持ち上げていた。
    しかも片手に一本ずつだ。ふっ、ふっと定期的な吐息のリズムと、
    腕の上下が一致している。肌に滴る汗の量が肌寒い十月の夜とは
    思いがたかった。
P.128 釣竿は昔の僕が作ったやつを借りることにした。船着き場の倉庫に投げ込んで
    放置してあるそれを拝借し、人目につかないように離れる。    
P.132 「ここはわたしのべすとぷれいすなのさ」
P.132 「ここにはね、砂浜を走ると体力作りにいいから、毎日走ってるの」
P.140 薄汚れた賽銭箱の底で百円玉が光っていた。
P.142 最悪、警察を呼ばれかねない。そうなったら恐らく島では初の犯罪検挙となる
    だろう。なにしろ普段の警察の仕事は壁の塗り替えとか、道の掃除である。この
    島は営利誘拐、傷害、その他血の気の多い諸々の事件がまったく起きていない
    のだ。作為的かと疑うほどに、なにもない。某小説の荻島もビックリである。
P.170 確か祖母は出っ張っていた石に足を引っかけて骨折したと聞いた。
    この石のことだろうか。
P.170 ビクともしなかった石と土の間に亀裂のように隙間が生まれる。
    ず、ず、ずと内臓でも引っこ抜いているような気味の悪い感触が
    手のひらを包み、そして、一気に重みが増える。土から離れた石の
    重さに指の血が止まりそうになった。
    …こういう抜き方で抜けるかな?逆に鍬なり棒でこじれば簡単に抜けそう.
P.180 「ほれー、行くぞみなのしゅー」
P.181 「なんであんなにあの言い方が気に入っていたんだろ」
P.181 そればっかり連呼していた女子がいた気もする。
    それがマチだったかもしれない。いや裏袋だったか、それともまた別か。忘れた。
P.187 僕とマチを隔てるもの、それは約束。
    他愛ない気持ちで交わした、些細な賭け。
P.187 僕とマチの賭け。
    それは負けた方が、相手に秘密にしていることを告白するというものだった。
    僕の秘密は、マチが大好きであるということ。
    負けた僕はそれをどうしても面と向かって言うことが出来なくて、約束を破った。
    そして、怒ったマチに殴られた。
P.187 自転車レースの優勝賞品も投げつけられて僕の鼻と頬を存分に痛めつけた。
    それで、僕とマチの仲はお終いだ。
P.205 軽トラの発音がおかしい。ケェ↑トラ↓になっている。漢字にすると
    景虎といったところだ。昔の武将さんみたいである。
P.213 「そうそう。いっしょにくるーじんぐとかどうかね」
P.216 「ふふふ、今日はやつの部屋の鳩時計にアーティスト魂をきざんできたのだよ」
P.218 少なくとも後、一週間は滞在することになる。その後は、帰らないといけない。
    この居心地のいい時代から、大半のものを失った現代へ。
    僕がいなければいけない世界に。それは考えると、牢獄のようでもあった。
P.240 しかも籠が桃色という悪趣味な仕様で、間違ってもこれで公道は
    走りたくない。宇宙人だってこの籠には乗ってくれそうもない。
    乗るのはもっと下等な地球人だけである。   …エリオはどちら?(笑)
P.236 「あんた、自転車レースのこと覚えてる?」
    「忘れるはずがない」
P.236 自転車レース。わたしとニアの運命を大きく歪めたもの。
    九年後には廃止されるそのレースはこの時代に、まだ存在している。
P.243 「あれぇ、みなのしゅーが来たぞ」
    「え、それ僕のこと?」
    「みなのしゅーである」
    どうやら僕一人のことを指すので間違いないようだった。父は小学校で
    何を教えているのだろう。思わず自分の父の指導力を疑ってしまうところだった。
P.243 僕ら以外に参加する大人は主催者のおじさんを含めて三人で、
    計六人ということになる。
    …(僕)玻璃綾乃・昔の僕・小さなマチ

P.251 子供が海で溺れていた。
P.254 ニアが海に落ちたと報告を聞いて、真っ先に思ったのは一つ。
    まーたあまさんごっこでもしたのか、あいつは。けしからんのぅ。
    …ここでニア≡僕だと勘違いしていた,のだな.(と再読時に気づいた.)
     落ちたのはニア≡近雄で,自転車でダイブして助けた僕は綾乃だったと.
P.263 「交通事故?」
    「そう。気づいたら自転車ごと吹っ飛ばされてた」
P.268 「そっちの方は、隠していた覚えがないの」

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