4月19日の日記

2012年4月19日 読書
森田季節『落涙戦争』講談社

素敵な不思議に包まれて漂ったような感じがした.
とても日常的な舞台で非日常の物語が紡がれる.
モズのおかげで凄くもやもやした結末,好いけど.

◇メモ
P.131 「お前さん、心の井戸がえらく浅くなっておるぞ。そうなると、焦って、
    何かあればすぐに跳びついてしまう。痛い目を見て学べることも
    あるじゃろうが、もう少しだけゆとりを持ちなされ」
P.142 だが、その時、ふっと闇の奥に青い光が一瞬きらめいたように感じた。
P.150 「羽黒修験の中で、南蛮いぶしという行がある。密室で唐辛子や
    その他の香辛料を炭火でいぶしていくんだ。すると、煙は人間の
    期間を刺激する。鼻水と涙は止まらず、叩きつけるように
    泣くことになる。

| 唐辛子、米糠にドクダミの葉の生干しをまぜたものを
| 炭火にくべる。刺激の強い煙と匂いが扇であおがれるため
| 閉めきった道場に坐る一同は読経もままならない読経を
| つづけるため、刺激の強い匂いと煙をまともに吸い込んでしまう。
| あまりの煙の激しさに失神する人さえいるとのこと。
| 地獄の行とはいえ、咳込み、鼻水の止まらない行。

だそうで.http://blog.goo.ne.jp/hayasida_517/e/d014ed070d25ad03507acd22c73ab96e

P.157 「おぬしはすでに大悟しておるのかもしれんな」太空の顔は
    妻を先に失った男のように無気力に見えた。
    「おぬし、闇の中で何か光を見なかったかの」
    「青い光を見たような気がします。ネオンの点滅のような」
    「まさか、そんなことが」
    大きな欠陥を知ったかのように、太空は目を見開き、手で顔を覆った。
    「何かあったんですか」
P.158 「薬師如来様は東方浄瑠璃世界の教主であらせられる」秘密を
    告げるように小声になる。「浄瑠璃とは今の言葉になおせば、
    聖なる青い宝石のような世界よ」
    「つまり、僕は浄土を見て、なけなかったというわけですか」
    信心深くもない自分が仏にすがるなんて虫がよすぎる話なのだ。
    しかし、そんな小粒の奇跡を体験しても泣けないものなのか。
    「いや、当然かな。僕は阿弥陀寺ですし。薬師さんの力は
    効かないんでしょう」
    太空は笑わなかった。僕だけが小さく笑っていた。
P.168 「電車の修理や清掃もおおごとだしね。車両って検査場みたいな
    ところで洗車されるんだけど、普通の車両は洗車設備の中を
    行って戻っての一往復ですませる。だけど、人をはねた車両は
    それを都合二往復するんだ。だから、どれが人をはねたか
    すぐにわかるんだよね。殺人犯が血のついた手を必死に
    洗う心理と似てるよね」

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