米澤穂信『氷菓』角川文庫
好奇心で走り出した千反田が好い~.
アニメも頑張ってるけど,もっと好い.
米澤さんの文章は面白いけれども
耽溺するほど好みというわけでもなくて
このシリーズは『ふたりの距離の概算』を
読んだだけで遡ることはしていなかった.
アニメの出来がいいので読んでみて
もっと早く読んでおけば良かったなと.
前の巻で描かれたようなのは5巻には
出てこないので,そういう要素があるとは
想像が及んでいなかった.(汗)
◇追記◇(2012年11月7日)
最初に出たスニーカー文庫版のイラストに興味があって
検索してみたら記事を発見.この絵で初読したら印象が少し違ったかも.
ライトノベル研究会
ラノベ史探訪(14)-『氷菓』とスニーカー・ミステリ倶楽部と
http://societyforlightnovel.wordpress.com/2012/03/03/%E3%83%A9%E3%83%8E%E3%83%99%E5%8F%B2%E6%8E%A2%E8%A8%AA%EF%BC%8814%EF%BC%89%EF%BC%8D%E3%80%8E%E6%B0%B7%E8%8F%93%E3%80%8F%E3%81%A8%E3%82%B9%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%82%B9/
◇追記◇(2013年1月5日)
P.206 の『生きたまま死ぬのが恐くて泣いたんです。』って至道無難禅師法語の
『生きながら死人となりてなり果てて思いのままに為すわざよよき』
を想定したのでは,ないだろうな.狸だから捩りかもしれないが.
◇メモ
P.8 道具主義って知ってるかい
… instrumentalism だか Pragmatism だか 不毛地帯.
P.26 「神山には旧家名家は少なくないけど、桁上がりの四名家といえば
その筋じゃ有名だよ。荒楠神社の十文字家、書肆百日紅家、
豪農千反田家、山持ちの万人橋家さ。数字の桁が一桁ずつ
上がっていくから、人呼んで桁上がりの四名家。
まあ、この四家に対抗できるとしたら病院長入須家か
教育界の重鎮遠垣内家ぐらいのものだね」
※著者は「競輪の十文字選手の名前が浮かんで、千反田の“千”と
十文字の“十”……では“十”“百”“千”“万”にしようと。……すいません」
※ 野生時代Vol. 56 2008年7月号 39頁
P.28 机に掛けた腰を浮かしかける。
その肩を、後ろからぎゅっと押さえつけられた。千反田が
いつのまにか後ろにまわっていた。
「待って下さい」
「な、なんだ」
「気になります」
思ったより近くにあった千反田の顔に、俺はたじろぐ。
P.29 「だから」
「わたし、なぜ閉じ込められたんでしょう。……もし閉じ込められた
のでなければ、どうしてこの教室に入ることができたんでしょう」
千反田のその眼差しには、いい加減な返事は許さないというような
一種異様な力があった。それに圧倒されて、俺の声は間抜けになった。
「だからなにかの」
「間違いだと言うのなら、誰のどういう間違いでしょうか」
「いや、それは俺の知ったことじゃ……」
「わたし、気になります」
ぐっと身を乗り出してくる。その分、俺は背を反らさなければいけない。
最初に俺は千反田を清楚とか言ったか。とんでもない、それは単に
第一印象だ、風貌の形容だ。俺は悟った、こいつの本性を一番
あらわしているのは目だ。全体の印象に似合わず大きく活発そうな目。
その目が千反田えるの本性だ。気になる。その一言で桁上がりの
四名家のお嬢様は好奇心の申し子になってしまったようだ。
P.57 ○二月二日、車輌暴走事故により一年生大出尚人君が死亡。追悼集会。
※古典部顧問の先生の名字も「大出」なのだが……
「ミステリを読み慣れた方は、後に繋がって復讐の動機になるのでは?
と思うかと。でもこれはそういうミステリ好きの方に向けた
レッドへリングなんです」
P.73 喫茶店「パイナップルサンド」
※「ブランキー・ジェット・シティの曲名からつけました。好きなんです」
アルバム『ロメオの心臓』収録曲
P.102 人並み外れた記憶力と人並み以下のカンを持つ千反田が悄然として
引き下がりかけるところに、伊原が口を挟んだ。
P.112 「遠垣内ですか。中等教育に影響力のある家ですよ。
県教育委員会に一人いて、市のにも一人。あとは校長が一人と
現役教師が二人ほどいるはずです」
P.192 「ええ。この千反田が妙なことを気にする好奇心の猛獣でなければ、
俺たちも気づかなかったでしょう」
P.210 千反田の長い黒髪は滲んだ汗で艶を帯び、頬は僅かに上気して桜色。
そして瞳は、爛々と輝いていると思わせるほど、生気に満ちている。
好奇心の爆発の兆候だ。
P.205 「思い出しました。わたしは伯父に、『ひょうか』とは
なんのことかと訊いたのです。そしたら伯父はわたしに、
そうです、強くなれと言ったんです。
もしわたしが弱かったら、悲鳴も上げられなくなる日がくるって。
そうしたらわたしは生きたまま……」
その目が、俺に向けられた。
P.206 「折木さん、思い出しました。わたしは、生きたまま死ぬのが恐くて
泣いたんです。……よかった、これでちゃんと伯父を送れます……」
P.208 伊原自身が書いた原稿は俺はまだ見ていないのだが、古典的名作と
呼ばれるある漫画への思い入れを述べたものらしい。確か寺とか
ミューとかナンバーズとか言っていたと思うが、くじ引きの漫画なのだろうか。
※「竹宮恵子さんの『地球(テラ)へ…』のことです」。ミュウは、ある種の
超能力を持つ新人類の呼称。「折木は『地球へ…』を知らないので、
間違って憶えています。“ミュー”ではなく“ミュウ”、
“ナンバーズ”ではなく“メンバーズ”が正解」。
ちなみに『クドリャフカの順番』のP338にも『地球へ…』は登場します。
好奇心で走り出した千反田が好い~.
アニメも頑張ってるけど,もっと好い.
米澤さんの文章は面白いけれども
耽溺するほど好みというわけでもなくて
このシリーズは『ふたりの距離の概算』を
読んだだけで遡ることはしていなかった.
アニメの出来がいいので読んでみて
もっと早く読んでおけば良かったなと.
前の巻で描かれたようなのは5巻には
出てこないので,そういう要素があるとは
想像が及んでいなかった.(汗)
◇追記◇(2012年11月7日)
最初に出たスニーカー文庫版のイラストに興味があって
検索してみたら記事を発見.この絵で初読したら印象が少し違ったかも.
ライトノベル研究会
ラノベ史探訪(14)-『氷菓』とスニーカー・ミステリ倶楽部と
http://societyforlightnovel.wordpress.com/2012/03/03/%E3%83%A9%E3%83%8E%E3%83%99%E5%8F%B2%E6%8E%A2%E8%A8%AA%EF%BC%8814%EF%BC%89%EF%BC%8D%E3%80%8E%E6%B0%B7%E8%8F%93%E3%80%8F%E3%81%A8%E3%82%B9%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%82%B9/
◇追記◇(2013年1月5日)
P.206 の『生きたまま死ぬのが恐くて泣いたんです。』って至道無難禅師法語の
『生きながら死人となりてなり果てて思いのままに為すわざよよき』
を想定したのでは,ないだろうな.狸だから捩りかもしれないが.
◇メモ
P.8 道具主義って知ってるかい
… instrumentalism だか Pragmatism だか 不毛地帯.
P.26 「神山には旧家名家は少なくないけど、桁上がりの四名家といえば
その筋じゃ有名だよ。荒楠神社の十文字家、書肆百日紅家、
豪農千反田家、山持ちの万人橋家さ。数字の桁が一桁ずつ
上がっていくから、人呼んで桁上がりの四名家。
まあ、この四家に対抗できるとしたら病院長入須家か
教育界の重鎮遠垣内家ぐらいのものだね」
※著者は「競輪の十文字選手の名前が浮かんで、千反田の“千”と
十文字の“十”……では“十”“百”“千”“万”にしようと。……すいません」
※ 野生時代Vol. 56 2008年7月号 39頁
P.28 机に掛けた腰を浮かしかける。
その肩を、後ろからぎゅっと押さえつけられた。千反田が
いつのまにか後ろにまわっていた。
「待って下さい」
「な、なんだ」
「気になります」
思ったより近くにあった千反田の顔に、俺はたじろぐ。
P.29 「だから」
「わたし、なぜ閉じ込められたんでしょう。……もし閉じ込められた
のでなければ、どうしてこの教室に入ることができたんでしょう」
千反田のその眼差しには、いい加減な返事は許さないというような
一種異様な力があった。それに圧倒されて、俺の声は間抜けになった。
「だからなにかの」
「間違いだと言うのなら、誰のどういう間違いでしょうか」
「いや、それは俺の知ったことじゃ……」
「わたし、気になります」
ぐっと身を乗り出してくる。その分、俺は背を反らさなければいけない。
最初に俺は千反田を清楚とか言ったか。とんでもない、それは単に
第一印象だ、風貌の形容だ。俺は悟った、こいつの本性を一番
あらわしているのは目だ。全体の印象に似合わず大きく活発そうな目。
その目が千反田えるの本性だ。気になる。その一言で桁上がりの
四名家のお嬢様は好奇心の申し子になってしまったようだ。
P.57 ○二月二日、車輌暴走事故により一年生大出尚人君が死亡。追悼集会。
※古典部顧問の先生の名字も「大出」なのだが……
「ミステリを読み慣れた方は、後に繋がって復讐の動機になるのでは?
と思うかと。でもこれはそういうミステリ好きの方に向けた
レッドへリングなんです」
P.73 喫茶店「パイナップルサンド」
※「ブランキー・ジェット・シティの曲名からつけました。好きなんです」
アルバム『ロメオの心臓』収録曲
P.102 人並み外れた記憶力と人並み以下のカンを持つ千反田が悄然として
引き下がりかけるところに、伊原が口を挟んだ。
P.112 「遠垣内ですか。中等教育に影響力のある家ですよ。
県教育委員会に一人いて、市のにも一人。あとは校長が一人と
現役教師が二人ほどいるはずです」
P.192 「ええ。この千反田が妙なことを気にする好奇心の猛獣でなければ、
俺たちも気づかなかったでしょう」
P.210 千反田の長い黒髪は滲んだ汗で艶を帯び、頬は僅かに上気して桜色。
そして瞳は、爛々と輝いていると思わせるほど、生気に満ちている。
好奇心の爆発の兆候だ。
P.205 「思い出しました。わたしは伯父に、『ひょうか』とは
なんのことかと訊いたのです。そしたら伯父はわたしに、
そうです、強くなれと言ったんです。
もしわたしが弱かったら、悲鳴も上げられなくなる日がくるって。
そうしたらわたしは生きたまま……」
その目が、俺に向けられた。
P.206 「折木さん、思い出しました。わたしは、生きたまま死ぬのが恐くて
泣いたんです。……よかった、これでちゃんと伯父を送れます……」
P.208 伊原自身が書いた原稿は俺はまだ見ていないのだが、古典的名作と
呼ばれるある漫画への思い入れを述べたものらしい。確か寺とか
ミューとかナンバーズとか言っていたと思うが、くじ引きの漫画なのだろうか。
※「竹宮恵子さんの『地球(テラ)へ…』のことです」。ミュウは、ある種の
超能力を持つ新人類の呼称。「折木は『地球へ…』を知らないので、
間違って憶えています。“ミュー”ではなく“ミュウ”、
“ナンバーズ”ではなく“メンバーズ”が正解」。
ちなみに『クドリャフカの順番』のP338にも『地球へ…』は登場します。
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