4月11日の日記

2013年4月11日 読書
荻原規子『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』カドカワ銀のさじシリーズ

冒頭の……引っ込み思案のしょぼくれっ子の様子から
半ば近くまでは,う~ん???という気分も伴ってたけど
怪異が描かれだしてからの圧倒的な物語展開に引き込まれた.
入口でこれだから,先が楽しみでしょうがない.

アニメの初回を観てたら「そとつがわこうこう」?
音韻で十津川が出てきて,小辺路を歩いたときの記憶が.
調べたらあの辺が舞台……アニメを抜かなきゃで一気開始.

◇メモ
P.6 外津川高校   …十津川高校

P.16 「玉倉神社は山奥よね。この付近の人たちにとってさえ、引っこんでいる」
    …玉置神社

P.18 この半島の海岸線と連峰の真ん中を、熊野古道が廻っている。
   玉倉神社が接しているのは、中央の大峯奥駈道と呼ばれるものだった。

P.48 泉水子自身が何度も乗ったことのある、ベル206Bのタービン・エンジンで
   耳慣れたものと同じだ。

P.99 「どうして、転校することにしたの」
   「殺されるよりましだった」

P.125 「ある意味においては、きみが自分で決めたんだ。きみは、前髪を
    切っただろう。まだ一部だからたいしたことにはならないが、その髪は
    紫子さんの大事な封印だったんだよ」
    「封印……」
    目をみはった泉水子に、相楽はこともなげに返した。
    「そう、封印だ。きみの三つ編みを最初に編んだ人は紫子さんだった。
     そして暗示をかけたんだ」

P.226  かすかに息をもらして、泉水子が笑った。薄紅の花が咲きほころんだような
    笑み。泉水子がこんなふうに笑うのは見たことがないが、深行は古い記憶の
    中で、こうした笑みを浮かべる女性を知っていた。
    「……紫子さん?」
    小声でつぶやくと、相手の黒目がちな瞳が生き生きとおどった。
    「ふうん、そなたは、わたしと出会っているのだな。紫子が従えるにしては、
    少々若すぎる年齢に見受けられるが、さて、どこで会っていたのだろう」

P.228 「まだ、そなたにつかまったわけではないぞ。将来の方向を見るのであれば、
     おおむね正しいとだけ言っておこう。とはいえ、泉水子の器を大切に
     するとよい。この子は、よくも悪くも、わたしの最後の器となるだろうから」

P.245 「おれもそう思ったんだ。会ったことがあるんだ、この峰で」
    立ち上がった深行は、玉倉山の尾根続きにわたる低木の林をながめた。
    「迷子になったことがあったんだ。佐和さんが言っていた、捜索する騒ぎに
    なったときだ。この山に来たばかりで、虫取りに夢中になって、どこまで
    歩いたかわからなくなって……そして彼女を見たんだ。紫子さんだとばかり
    思っていた」
    自分に言いきかせるように、深行はつぶやいた。
    「おれだって、ずいぶん前に彼女に出会っている。雪政ばかりじゃないんだ」

P.280 泉水子は木陰の和宮を見やって、大きく深呼吸した。そして、やにわに
    深行の手から腕をふりほどき、肩をゆすった。
    「何を言っているの、深行くん。それでも優秀なの」
    鼻先で言われた深行が目をぱちくりさせるうちに、泉水子は和宮のほうへ
    一歩踏み出していた。
    「勝手なことを言わないで。許さないのはこっちよ」
    対峙する相手に向かって言い放った。どこからわいてきた怒りなのか、
    自分にも判断できなかったが、引火したガソリンのように突然燃え上がった
    泉水子の内部だった。これほど憤激したおぼえはあまりなく、決して
    引かないという岩のような決意が生まれていた。
    「あなたが、わたしの願いでつくられたというなら、わたしの考えに従いなさい。
    好き勝手にふるまうのわ許さない。雷をここに落とすことなど最低よ。
    わたしを脅したり二度としないで」
    和宮はしばらくそのまま泉水子を見つめていた。しかし、ひるんだわけでは
    なさそうで、静かな声でたずねた。
    「もしも、ぼくが従わないとしたら、どうするの」
    「あなたをきらいになる」
    泉水子はためらわずにきっぱりと告げた。
    「きらいになったら、わたしは二度とこの山に来られなくなる。それでもいいの?」
    「勝手な話だよ。きらいになってもならなくても、きみは山を出ていくんでしょう」
    「それでも、二つが同じことにはならないはずよ。よく考えなさい」
    泉水子が厳しい口調を変えずにいると、和宮はもう言い返さなかった。
    言われたとおりに考えているのか、長いあいだ黙ってたたずんでいた。
     彼がみじろぎしたとき、それはわずかなしぐさに見えた。片足を少し後ろに
    引いただけだったのだが、槙の木陰にはだれもいなくなっていた。それでも、
    消えたのではなく、去っていったのだと、気配のなごりが感じられた。

◇巻末記載
引用文献
「北辰菩薩陀羅尼経」 『修験道秘経入門』 羽田守快著 原書房
「祓 五体加持文」 『修験道秘経入門』 羽田守快著 原書房

万葉集 巻第十一 二六四〇
% 梓弓引き見弛べ見来ずは来ず来ば来そをなぞ来ずは来ばそを
% 本文299頁.角川文庫296頁

万葉集 巻第十一 二七八七
% 天地の 寄り合い極み 玉の緒の 絶えじと思ふ 妹があたりみつ
% 本文298頁.角川文庫295頁

参考文献
『山伏の歴史』 村山修一著 塙書房
『吉野・熊野信仰の研究』 五来重著 名著出版

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