4月20日の日記

2013年4月20日 読書
荻原規子『RDG4 レッドデータガール 世界遺産の少女』カドカワ銀のさじシリーズ

この物語で初めて目が潤んでしまった.
泉水子が姫神に嫉妬するあたり.ただ,そこでの
真響のもっていきかたが微妙にずれてる気もする.
そして,泉水子の姫神受け止めは,これから
大転換するんだろうな,きっと.

◇八王子城跡絵
http://homepage3.nifty.com/azusa/tokyo/hatioujisi.htm
管理棟というのは,公園としてのもの.

以前,北高尾縦走しようとして,管理棟脇からの入口見落として
城跡の奥のほうから強引に上がって,莫迦はやるもんじゃないと思った.
足場ぐずぐずだし急だし危なっかしいかぎり.井戸のあたりに登り着いた.

◇メモ

P.49 「これが八王子城跡。山城だから、本丸跡へ行こうと思えば山登りの
   時間がかかるが、地図上で見るとお隣さんのようなものだろう。
   前から知ってはいたんだが、たいしたもんじゃないと思っていたら、
   地元の研究家によれば、戦国時代の終焉をまねく合戦として、
   なかなか重要だったんだよ、この城の落城は」

P.83 「真響さん、わたし、だれかわたしを好きになってくれる人がいたら、
    その人とつきあってみることにするね」

P.96 「きみが、どうにもならないくらいせっぱ詰まった状況に追いやられて、
    助けを求めるとしたら、そのときには、このパソコンの電源を切って
    使いなさい。いつもはふつうに使ってかまわない。けれども、
    最終手段として使うときには電源を切るんだ」

P.134 「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」
    その後に、人差し指と中指を立てた剣印をつくり、鞘から剣を
    抜くようにして、空中に格子状の線を描いた。
    「こうして縦横に切るのが、同じことを唱える早九字だ。密教僧でも
    修験者でも同じように使うし、陰陽師はこの格子型をドーマンと呼ぶ
    魔除けにする。忍者も精神統一に使う。山伏の山入りの護身には、
    もっとも重要な呪文になっている。古くは道教あたりにあるらしい」

P.158 「あなたの場合、地毛でも通用しそうな髪の長さだけど、『鬢そぎ』を
    つくるわけにいかないから、やっぱり鬘を被ってもらうね。鬢そぎって
    知ってる?あごの両わきのあたりだけ、短くするの。着物の前身ごろに
    かかる髪もね。それが、平安時代から続く垂れ髪のスタイルなのよ。
    地毛が長い方が付け毛によくなじむから、自然な感じに仕上がると思うよ」

    …『鬢そぎ』っていうのか……調べることをサボってた.

P.171 (だいじょうぶ、護身ができる。今のわたしは護身法を知っている……)

P.195 「わたしが思ったとおりだ。ここには何もいない。この城跡に、今、
     怨霊と呼べるものが残っているとするなら、わたしひとりだ」

P.201 「……歩いて気がすんだら、そろそろ鈴原にもどってほしいんですが。
    いつになったらもどってくれますか」
    「もどる? どこへ?」
    本気で知らないように、姫神はたずねた。深行は、その発言に
    あわてずにいられなかった。
    「ふざけないでください。このままですか」
P.202 「わたしだって、鈴原といえば鈴原だぞ」
    「おれが言っているのは、何千年も生きたりしていないほうの鈴原です」
    姫神は、わかっていないなという目つきをした。
    「こうしろああしろと、わたしはわざわざ言ったりしない。言わなくても従うのが
    そなたであるからだ。和宮とはそういうものだからだ」
    「おれは相楽です」
    「深行は憤慨した声を出した。相手が正真正銘の神であろうと、
    これにはむっとした。
    「取りちがえないでください。さっきは名前で呼んだじゃないですか」
    「そなたは、和宮でもあるのだ。いまだに気づかずにいたの?戸隠で
    あれほど一つになっていたというのに」
    息が止まり、深行は目を見はった。まさかと言いたかったが、声が出てこない。

P.204 「あまりにこいつがふがいなくて、涙が出そうだから、
     いっしょにいることにしたんだ」

P.206 「無理やりに、わたしを追い払おうとするのはむだだぞ。わたしはすでに、
     そなたが教えた護身法の内にあるのだから」

P.206  深行はもっていかれそうな自分を感じ、切り札として温めていた札を
    出すしかないとさとった。
     「オン・キリキャラ・ハラハラ・フタラン・バソツ・ソワカ」
     声を低め、断固として唱える。深行はなるほど、泉水子に九字の切り方を
     教えた。けれども、その九字を解除するとき唱える呪文は教えなかったのだ。
     %九字の秘術を解く呪文.他に オン・バザラ・トシコク という呪文もある.

P.212 「……さっき、相楽くん、鈴原って呼ばなかったよね」
    「それは、姫神が自分も鈴原だと言うからだ」
    「どういうこと?」

P.213 「後で思い出してみりゃわかる。本当にそれだけだ。ただ、姫神は今日、
     やたらにたくさんしゃべった――おれが考えてもみなかったことを。
     雪政たち、これをどこまで知っているのやら。おれも今、混乱している。
     だから、今すぐ聞かずに、よく思い出してから意見を言ってくれ」

P.213  泉水子にとって、質問するなと言われるのは、会話を拒否されたのと
    同じことだった。今ここにいる泉水子を、頭から無視した言いぐさだ。
    何もわからず、不安でたまらないというのに、深行は思いやろうとも
    慰めようともしないのだ。
     泉水子は、両手をこぶしに握りしめた。
    「ひどい」
    「何がひどいんだよ」
    ライトを手にした深行が、いぶかしげに見やった。本気でわからない
    ようだった。泉水子は口調に憤りをこめた。
    「話せないようなこと、わたしの知らないときにするなんて」
    深行は疲れた声になった。
    「怒ってどうするんだ。隠し事にもならないのに。おまえだって、全部見てるし
     聞いている。おれがしゃべっても偏見になるから、記憶がもどるまで待てと
     言ってるだけだろ」
    「知らない」
    ぷいと横を向いた泉水子を見て、深行もいくらか憤然とした。
    「おれがどれだけ引っぱり回されたか、ちっとは考えろよ。おまえのせいで」
    「わたしじゃないもん」
    「勝手に怒ってろよ。ただし、姫神にだけはなるな」
    「知らない」
    …(読んでて)深行に同情.何だ,この泉水子はと思った.※※

P.217 「真響さん……わたし、もう、どうしていいかわからないよ……」

P.218 「いやな目に……あわせた」
    泉水子は、ぽつりと答えた。
    「相良くんを」
    …ここ,※※が効いて物凄く切なかった.この物語読んで来て一番響いた.

P.219 「このわたしが、怨霊だったの。城跡に今も残っている怨霊は、わたしひとり
    だったの。相良くんにそう言ったの……」
    「しっかりしてよ、泉水子ちゃん。どうしちゃったの」
    真響は、まだ泉水子の肩に手をおいていたので、急いで揺さぶった。
    「何か、悪い夢を見ていたの?今、ちょっと、現実がわからなくなっていない?」
    「現実だよ」
    泉水子は、はじめて真響をまともに見上げた。うるんだ黒目に窓の外の
    明かりがきらめいた。
    「わたし、ずっとずっと思いたくなかった。自分がこんなものだと
     考えないようにしていた。でも、もう、だめって気がする……」
    瞳の明かりがしばらく揺らめいて、筋となって両ほおにこぼれ落ちた。
    「相良くんでさえ、怖がっていたの。わたしって、人類の敵だったの……」
    涙がどんどんあふれてきて、泉水子はすすり上げた。
    「……この先、わたし、自分でなくなるのかもしれない。お下げを
    編んでいたのに、かんたんになりかわってしまって、もう、
    防ぐ方法もわからない」

P.220 「わたし、今まで、あまり他の人に触ったことがなくて……こうして、だれかに
    触っているのって、気持ちいいね。親も、おじいちゃんも、佐和さんも、
    やさしいけれど抱きついたりできない人たちだったの。だから
    真響さんのこと、うらやましいと思っていた」

P.224 「……たしかに、相楽くん、姫神に好かれて、あんまりいやだと思って
     いないと思う。そのことが、今になればよくわかる」
    やっとの事で口にするという態度で、泉水子はぼそぼそ言った。
P.225 「もしかすると、姫神が好きなのかもしれない。前からそんなところ、
     少しずつあったし。でも、それ、わたしじゃないもの。わたしと
     ぜんぜん関係ないもの」
     声が震えはじめ、もう一度泣き出しそうなのが明らかだった。
     「こんなのってある?わたし、まだ彼氏をつくったこともないんだよ。
     それなのに、姫神が――わたしの知らないところで、わたしに憑いた
     姫神が、深行くんと出かけたり、深行くんと手を握ったり、深行くんと
     見つめ合ったり、深行くんと……」
    「ストップ、ストップ」

P.225 「……姫神は……悪い女だと思う。前からいやだったけど、わたし、
    やっぱり大きらい。どうして……鈴原の血に、あれほど人間じゃないものが
    生まれたんだろう……」

P.229 「相楽、あんたって人は、純情な女の子をつかまえて何やってるのよ」

P.229 「だったら、もう一度言いなおすね。純情な女の子をつかまえて、何、
     やるべきことをやらないのよ、責任のがれでしょうが」

P.230 「フォローなさすぎだよ。あの子が、今まで男の子とまともに出歩いたことも
     なかったって、ちゃんと知っているくせに。泣いちゃって当然だよ。
     泉水子ちゃん、相楽が姫神ばかりちやほやして、姫神とデートして、
     自分は放っておかれたと思っているよ」
      深行ははじめてたじろいだ。

◇銀のさじ版にはなくて角川文庫版にある巻末記載

引用文献
『呪い完全マニュアル』 仙岳坊那沙著 国書刊行会
%読みは「まじない」である.

参考文献
『決戦! 八王子城――直江兼続の見た名城の最期と北条氏照』
前川實著 揺籃社ブックレット6

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