杉井光『神様のメモ帳〈8〉』電撃文庫

著者的には,中編+短編×2 の筈が
中編+短編+中編 となったというけど
読んだ感じだと,二つの中編という気も.
三代目上京編と,ひっくり返し編.

3巻で彩夏が復帰したとき驚いたけど
P.107の『赤い粉末』,P.262の『赤い錠剤』が
あまりにビックリで……ピンクだったのに.
まあ,この8巻の状況にあわせるため,かなぁ.
そして,エンジェルフィックスが覚醒剤・幻覚剤系なのに
どうしてケシの花?という一巻での疑問が薄らいだ?

しかし,ナルミの麻雀力?を示す場面の

イーシャンテンであり,一番広い待ちになるのは
5ピンひいて9ピン切っての聴牌.
待ちは,1 4 7 と 2 5

なんだか,無理っぽい気もするけれどもどうなんだろう.

『神様のメモ帳』 一巻目の感想
http://felis.diarynote.jp/200907252127344417

◇メモ
P.24 四代目は店長と僕の顔に釘を一本ずつ打ち込むようにして一瞥をくれると、
   近くの棚に手を伸ばした。ぎっしり重ねてあった麻雀牌セットの中から、
   ピンズだけをまとめて抜き出し、机の上で伏せて混ぜ、十三枚を
   裏返しのまま選ぶ。一直線に並べて両手でつかみ、持ち上げ、
   ほんの一瞬だけ僕に見せてからまた伏せて置いた。
   「……見えたな?」
P.25 「え? あ、はあ、まあ」
   「テンパってたか」
   「イーシャンテンでしたね」
   「なに引いてなに切るといちばん広いテンパイになる?」
   「5ピン引いて9ピン切れば147ピン25ピン待ちになる、かな」
   四代目は、伏せてあった十三枚を開いて店長に見せた。店長はその牌を
   数字順に並べ替えて整理すると、信じられない、といった顔で
   僕と四代目をかわりばんこに見た。
   「正解だ……い、一瞬でしたよ?今の」
   「いや、だれでもできるでしょ、これくらい」
   四代目が僕の背中をどんと突いた。
   「自覚してないようだからはっきり言っておいてやるが」と、僕の身体を
   バックルームの出口に押しやる。「俺の知り合いの中で、間違いなく
   おまえがいちばん麻雀が強い。だから呼んだんだ。いいから行け。
   ゲーム代も負け分もみんな俺が持つ」

P.78 「猿よりも劣る助手を打たせるよりは、息も絶え絶えで牌も握れない僕が
   座っていた方がまだましだおろうっ」いや僕の方がましだよ。「いいかい四代目、
   一度きみに言っておこうと前々から思っていたけれど、きみの義弟は頭蓋骨の
   中でトマトもキュウリもすくすく育つくらい救いがたい脳天気なのだよ!」
   「俺もおまえに一度言っておこうと思ってたけどな、おまえの助手は
   ヒマラヤを半ズボンで登ろうとするくらい危機感がねえ」
P.88 『全局国士無双狙い、というのはね』
   一昨日の夜、アリスは説明してくれた。
   『ばかばかしく思えるかもしれないが、トーナメントなどで実績も残している
   れっきとした戦術なんだよ』
   …平和ほか軽めの手で早上がりして突っ走ると何でもないような.
    もしくは,テンパイ前に役牌を切らすが.中盤以降の明棹は流石に無茶.(笑)

P.104 「しかし藤島さんも大したもんですよね、関西の組長とも
    四分六の盃かわしてるなんて」
P.105 「下家が1ピンと《西》のシャボ、ダマテンで八巡目です。2ピンは
    四枚見えてます。ここで持ってきた1ピンが止まるわけがないんです」
    「たしかに」
    店長とは話が早い。『なにか気配を察したので当たり牌を止める』というのは
    麻雀漫画の世界だけの話で、実際には
    『誰が打っていてもまず止まらないあたり牌』というのが結構ある。
    将棋でいうところの詰みだ。どれだけ強くても詰みは回避できない。
    強い人というのは詰まされそうな状況にならないようにするか、
    あるいは自分が詰む前に相手を詰まらせるか、どちらかなのだ。麻雀も同じ。
P.107 そして僕は見つけてしまう。大便器の足下にわずかに付着した、赤い粉末。
     …ピンクじゃなかったから次頁読むまで反応できずに,ちと損した気分.
P.109 エンジェル・フィックス
    「……どうしてこんな名前にしたんだろうね」
    あらためて、死人のデータが印刷されたプリントアウトを手にして、
    僕はアリスに尋ねた。ベッドうの上の彼女は、いくつものモニタが放つ
    淡い光の中で振り向いた。
P.110 「とても不愉快な推測だが」
    アリスは冷房の風よりもなお冷え切った声で言う。
    「おそらくジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの短編の題名からだろう。
    あの墓見坂という男とぼくと妙に趣味が合ったらしいね」
    「……麻薬の話なの」
    「いや。異星人が地球から善人だけ選んで別世界に連れていってしまう
    という話さ。素敵なオチもついているのだけれど、彼がそこまで考えて
    名づけたかどうかはわからない」
    『天国の門 Angel Fix』(ハヤカワ文庫SF『星ぼしの荒野から 』所収)

P.138 「知ることは死ぬこと。でも、彩夏のその部分はもう死んでいる。さあ、ぼくは
    ニート探偵としてどうするべきだろう。その言葉の剣は彩夏をもう一度
    殺してしまうだろうか?」
P.151 「きみがここに顔を出さない間、きみが前借りした給料は負債となって一日ごとに
    ふくれあがり、ネイピア数の神秘性を輝かしくあらわにしてくれるだろうね」
    ネイピア数
       e = 2.71828 18284 59045 23536 02874 71352 …
P.163 「おまえは気づけるはずもないが、俺はアリスともう三年以上つるんでるから、
    わかる。あいつが事件を解決するスピードは、この一年で異常に速くなってる」
    「はあ」なんの話だろう。
    「橋を架ける前に、ロープくわえて河に飛び込むアホが一人、仲間になったからだ」
P.168 「鉢植えの影の角度は、ほとんどまっすぐ右。昨日のも、先週のも」
P.180 [金、……シュシュリに、金……」
P.196 「シュシュリだろ。墓見坂さん、あんた、とっくにシュシュリに逢ってたんだろ……」
P.196 「なんですかシュシュリって」
    「天使の名前だよ。墓見坂さんがいつも言ってた」
P.203 「……シュシュリ?」
    アリスはドクターペッパーを一口飲んだところで僕を振り返ってそう言った。
    僕は報告の途中で言葉を切ってうなずく。
    アリスの表情に言いがたい苦味が含まれていたからだ。
    「なるほどね。ぼくのろくでもない推測はどうやらあたっていたようだ」
    「推測って」
    「前に話しただろう。エンジェル・フィックスという名前の下になった、
    ティプトリーの小説さ。シュシュリというのは
    その話に出てくるエイリアンの――つまり天使の名前だよ。
    あんな男と趣味がかぶるというのは気分のいいものではないね」
P.302 「……あれ、知ってるよ藤島くん」
    フェンスにしがみついた彩夏が熱に浮かされたような口調でつぶやく。
    「知ってる。ああやって、同心円状に植えて、
    まわりを高い蔓植物で囲めって、教わった」
P.302 他の植物で円形に囲む特殊な植え方は、麻薬植物の隠蔽方だ。
    でも空から見れば、たとえ花が咲いていない冬であっても、判る。
P.305「 伊原木潤子は自宅でガス栓ひねった。俺が一時間遅れたら死んでた。
    てめえはいつも詰めが甘いんだよ。どけ」
    …想定地域で中毒死できるガスが供給されてたのは1970年代半ばまでか?
      1988年には東京ガスは転換を終えている.
P.311 「どっちがやり方を考えたのかはわからないよ。友樹くんが思いついて、
    必要なものを千賀沢に要求したのかもしれない。
    世の中、恐い子供がけっこういる」
P.313 この事件がいったいなんだったのか、その意味を今も見つけ出せずにいるのだ。
    四代目と縁を切って、彩夏の痛みの記憶をひじくり返して、トシさんを再び
    死の淵まで追い詰めて、おまけに停学まで食らって、ようやく終わったこの事件が
    ――よくわからなかったのだ。憎むべき相手さえいなかった。シュシュリは七歳の
    子供だった。ほんとうに天使だったみたいなものだ。
     なんだったんだよ。カーテンの隙間から二月の曇り空に向かって毒づく。
    なんの意味があったんだ。僕らはなんであそこまで
    ぼろぼろにならなきゃいけなかった?
P.314 それがガキの言い分であることは僕だってわかっていた。意味なんてものは、
    だれかがだれかに伝えたいものがあるときにはじめて生まれるのだ。だから、
    この世界のほとんどものもに、意味はない。
     … 好いな~.
P.328 「美的感覚どころか味覚もないのかいっ!ドクターペッパーへの侮辱は
    赦さないよ。不味いというのならその理由をテキストにして提出したまえ、
    ラーマーヤナにも匹敵する圧倒的表現量でもって論破して」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%A4%E3%83%8A

コメント

nophoto
Ehab
2012年8月14日15:28

There’s nhoting like the relief of finding what you’re looking for.

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