感謝されない医者―ある凍傷Dr.のモノローグ
2009年3月9日 山日記 コメント (2)
金田正樹『感謝されない医者―ある凍傷Dr.のモノローグ』山と溪谷社
随筆的にも楽しめる書籍の話だけど山日記区分に.
山スキーMLで凍傷治療のことが話題になったので
いい機会だから読んでみておこうと.
急いで小さく拾い読みしたいなら,32頁~34頁と
7章の凍傷の病態(P.P.199-238)だけで.
もう少し読めるのならば,6章の忘れえぬ患者を.
ま,面白いから通読するのが一番ではある.
◇目一杯に絞った要点
予防としては交感神経系を鎮める工夫をする.
凍傷になってしまったら…水泡は切らない・破れないようにする.
血管拡張剤を点滴して改善をはかったあと駄目なところを切断する.
なお,山スキーMLには救急医の方から次のような意見が出されている.
| この世界で大変著明な金田先生の権威を侵すつもりは全くないのですが、
| 医学的には血管拡張薬の凍傷への効果は証明されてはいません。
| 現に米国などでは血管拡張薬ではなく血栓溶解薬の効果が報告されています。
| といっても金田先生の治療法は他の医師にはない多数のご経験の中でのことであり、
| もちろんそれに納得される患者さんはそれで良いのです。
| ただ、血管拡張薬を使わない医師が単に無知や経験不足でそれをしないのではなく、
| 効かないので不要なものは使わない・使う必要がない、という判断をしている場合も
| あることを知っていただけたらと思います。
血管拡張剤による対応と血栓溶解薬による対応の二種類あることを
頭の隅においておくといいのかもしれない.
◇メモ
P.32 当時、小野薬品から動脈性疾患に対する血管拡張薬が治験薬として出された。
本来は閉塞性動脈硬化症、閉塞性血管性血管炎のような血管が詰まる病気に
使うもので、凍傷に適応して作ったものではない。効能書には、抹消血管を拡張して
P.33 血流を改善すると書いてある。よし、これを使ってみよう。小野薬品に無理を言って、
このまだ発売されていない血管拡張薬、プロスタグランジンE1を百本分けて
もらった。効能を期待して使ってみたが、効果抜群で凍傷の局所症状が
おもしろいように改善していった。治験薬なので、費用はいっさいかからない。
この薬がなかったら、凍傷の治療は進まなかったであろうと思われる。
P.34 <抗血栓薬ヘパリンによる治療がうまくいかなかった症例>
P.P.39-40 <入山前から風邪症状があり、行動中に悪化し、肺炎になってしまった症例>
P.54 あれから二年後の冬、W氏が北鎌尾根に行く途中、雪上車に轢かれ死亡した
という連絡が入った。
…黙ってピッケル引っ掛けラクしてたら知らずにバックされ巻き込まれた事故の人?
P.201 寒冷、飢え、脱水、疲労、遭難の危機などの精神的、肉体的ストレスは、大いに
この交感神経を刺激する。このストレスは脳(視床下部)を刺激し、交感神経が
興奮する。すると副腎からアドレナリン、ノルアドレナリンという物質が分泌され、
これが「血管収縮」を引き起こす。ストレスに曝された時間が長くなればなるほど、
血液循環に及ぼす影響は持続し、末梢の循環は悪化する。
「寒冷」が交感神経を優位にして毛細血管を収縮し、血行が悪くなり凍傷を起こす
というだけではなく、もっと「総合的ストレス」が交感神経を優位にしていると
考えたい。遭難、ビバークなど自分の身に危急的なストレスが迫っているときには、
P.201 より凍傷になりやすいと言っても過言ではない。
P.214 水泡、血泡は愛護的に扱い、決して破ってはならない。
P.233 高所での水分は、一日約四リットル以上は摂取したい。
P.233 水(お湯が最適)一リットルに砂糖四〇グラム、塩三グラムを混ぜたものを補水液
P.234 首の第七頚椎横突起のところに、星状神経節という星の形をした交感神経の
固まりが左右一対ある。これが、頭、頚部、肩、腕、手の血管の流れを調節している。
寒いときはこの神経が優位になるが、それをさせないように首を暖かくしてやる
ことが重要である。寒い日に首にマフラーを巻くと、体が温かく感じるのは
そのためである。この神経を寒い風に曝さないように、暖かいマフラーで
首を守ってやるのも凍傷予防の一つになる。
P.236 患者に、山に行くから予防薬をくださいと要求されることがある。
薬を飲みながら山に登ることは、ドーピングにも類似しているように思われ、
その要求には応えていない。
現在まで、予防薬を飲み続け凍傷にならなかったという客観的なデータもない。
ユベラなどのビタミンE剤は、血管を保護する働きから血行障害を軽減し皮膚の
血流量を増加させ、血小板の凝集を抑制させる抗血栓作用もあるとされている。
またアスピリンは、普段、解熱鎮痛剤としておなじみの薬であるが、
抗血小板薬として動脈硬化などで詰まった血栓溶解のために使われる。
しかし、この薬を登山中に飲み続けていれば零下二十度、三十度の中で
ずっと血行がよく、寒冷ストレスによる毛細血管の収縮を防ぎ、血液の
「泥化現象」を予防できるとは思えない。いわゆる本来の使い方と、
P.237 寒い山という条件の中での使い方は異なるものであり、抗血栓薬はその効果を
十分発揮できないと考える。また使い方を間違うと、出血傾向にもなるので
避けたほうがいい。
喫煙は、ニコチンの血管収縮の作用があり、凍傷には禁忌である。
◇参考 %本書に記載されてはいない.
指の関節 指先 DIP PIP MP 掌
DIP関節 遠位指節間関節 distal interphalangeal joint …いわゆる第一関節
PIP関節 近位指節間関節 proximal interphalangeal joint 〃 第二 〃
MP関節 中手指節間関節 metacarpophalangeal joint
手の骨と関節
http://hand.raindrop.jp/bone%20and%20joint.html
随筆的にも楽しめる書籍の話だけど山日記区分に.
山スキーMLで凍傷治療のことが話題になったので
いい機会だから読んでみておこうと.
急いで小さく拾い読みしたいなら,32頁~34頁と
7章の凍傷の病態(P.P.199-238)だけで.
もう少し読めるのならば,6章の忘れえぬ患者を.
ま,面白いから通読するのが一番ではある.
◇目一杯に絞った要点
予防としては交感神経系を鎮める工夫をする.
凍傷になってしまったら…水泡は切らない・破れないようにする.
血管拡張剤を点滴して改善をはかったあと駄目なところを切断する.
なお,山スキーMLには救急医の方から次のような意見が出されている.
| この世界で大変著明な金田先生の権威を侵すつもりは全くないのですが、
| 医学的には血管拡張薬の凍傷への効果は証明されてはいません。
| 現に米国などでは血管拡張薬ではなく血栓溶解薬の効果が報告されています。
| といっても金田先生の治療法は他の医師にはない多数のご経験の中でのことであり、
| もちろんそれに納得される患者さんはそれで良いのです。
| ただ、血管拡張薬を使わない医師が単に無知や経験不足でそれをしないのではなく、
| 効かないので不要なものは使わない・使う必要がない、という判断をしている場合も
| あることを知っていただけたらと思います。
血管拡張剤による対応と血栓溶解薬による対応の二種類あることを
頭の隅においておくといいのかもしれない.
◇メモ
P.32 当時、小野薬品から動脈性疾患に対する血管拡張薬が治験薬として出された。
本来は閉塞性動脈硬化症、閉塞性血管性血管炎のような血管が詰まる病気に
使うもので、凍傷に適応して作ったものではない。効能書には、抹消血管を拡張して
P.33 血流を改善すると書いてある。よし、これを使ってみよう。小野薬品に無理を言って、
このまだ発売されていない血管拡張薬、プロスタグランジンE1を百本分けて
もらった。効能を期待して使ってみたが、効果抜群で凍傷の局所症状が
おもしろいように改善していった。治験薬なので、費用はいっさいかからない。
この薬がなかったら、凍傷の治療は進まなかったであろうと思われる。
P.34 <抗血栓薬ヘパリンによる治療がうまくいかなかった症例>
P.P.39-40 <入山前から風邪症状があり、行動中に悪化し、肺炎になってしまった症例>
P.54 あれから二年後の冬、W氏が北鎌尾根に行く途中、雪上車に轢かれ死亡した
という連絡が入った。
…黙ってピッケル引っ掛けラクしてたら知らずにバックされ巻き込まれた事故の人?
P.201 寒冷、飢え、脱水、疲労、遭難の危機などの精神的、肉体的ストレスは、大いに
この交感神経を刺激する。このストレスは脳(視床下部)を刺激し、交感神経が
興奮する。すると副腎からアドレナリン、ノルアドレナリンという物質が分泌され、
これが「血管収縮」を引き起こす。ストレスに曝された時間が長くなればなるほど、
血液循環に及ぼす影響は持続し、末梢の循環は悪化する。
「寒冷」が交感神経を優位にして毛細血管を収縮し、血行が悪くなり凍傷を起こす
というだけではなく、もっと「総合的ストレス」が交感神経を優位にしていると
考えたい。遭難、ビバークなど自分の身に危急的なストレスが迫っているときには、
P.201 より凍傷になりやすいと言っても過言ではない。
P.214 水泡、血泡は愛護的に扱い、決して破ってはならない。
P.233 高所での水分は、一日約四リットル以上は摂取したい。
P.233 水(お湯が最適)一リットルに砂糖四〇グラム、塩三グラムを混ぜたものを補水液
P.234 首の第七頚椎横突起のところに、星状神経節という星の形をした交感神経の
固まりが左右一対ある。これが、頭、頚部、肩、腕、手の血管の流れを調節している。
寒いときはこの神経が優位になるが、それをさせないように首を暖かくしてやる
ことが重要である。寒い日に首にマフラーを巻くと、体が温かく感じるのは
そのためである。この神経を寒い風に曝さないように、暖かいマフラーで
首を守ってやるのも凍傷予防の一つになる。
P.236 患者に、山に行くから予防薬をくださいと要求されることがある。
薬を飲みながら山に登ることは、ドーピングにも類似しているように思われ、
その要求には応えていない。
現在まで、予防薬を飲み続け凍傷にならなかったという客観的なデータもない。
ユベラなどのビタミンE剤は、血管を保護する働きから血行障害を軽減し皮膚の
血流量を増加させ、血小板の凝集を抑制させる抗血栓作用もあるとされている。
またアスピリンは、普段、解熱鎮痛剤としておなじみの薬であるが、
抗血小板薬として動脈硬化などで詰まった血栓溶解のために使われる。
しかし、この薬を登山中に飲み続けていれば零下二十度、三十度の中で
ずっと血行がよく、寒冷ストレスによる毛細血管の収縮を防ぎ、血液の
「泥化現象」を予防できるとは思えない。いわゆる本来の使い方と、
P.237 寒い山という条件の中での使い方は異なるものであり、抗血栓薬はその効果を
十分発揮できないと考える。また使い方を間違うと、出血傾向にもなるので
避けたほうがいい。
喫煙は、ニコチンの血管収縮の作用があり、凍傷には禁忌である。
◇参考 %本書に記載されてはいない.
指の関節 指先 DIP PIP MP 掌
DIP関節 遠位指節間関節 distal interphalangeal joint …いわゆる第一関節
PIP関節 近位指節間関節 proximal interphalangeal joint 〃 第二 〃
MP関節 中手指節間関節 metacarpophalangeal joint
手の骨と関節
http://hand.raindrop.jp/bone%20and%20joint.html
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